第3回 ワケ#2

男とのセックスは全く実感がなかった。夢を見ているかのような錯覚に陥る。頭の中は真っ白、体はフワフワした。この時間が一生続いたらどんなに幸せだろうと強く思った。でもやはりどこかで、いつかは終わってしまう、という気持ちもあった。それが現実となるまでに、さほど時間はかからなかった。

三ヵ月後、男と別の美人社員との噂が立った。毎日のように更新される情報。聞きたくないのに、耳に入ってくる。周りは誰もわたしと男のことは知らないから、容赦なく色んなことを話してくる。しかも結構楽しそうに。

わたしも何とか笑顔を作って聞いていたが、口角が震えてしまう。きっと目も笑っていなかったと思う。体からは血の気が一気に引く。その場に立っていられないくらい、体がフラフラした。途端に男に対する不信感が湧き立った。爆発しそうなのを必死に抑えた。わたしのことは好きになってくれなかったのだと思うと、情けなくて何だか笑いが込み上げてくる。その理由はわかる。

わたしが「ブス」だからである。
美人社員と比べたらまさに”月とスッポン”だ。

わたしは男に声をかけられても、もう二度と自宅に行くことはなかった。わたしは男にとって何者だったのか。都合のいい女、あるいはただの娼婦だったのだろう。多少なりともわたしのことを好きでいてくれているのだろうと思っていたのだが、やはりそれは自惚れに過ぎなかった。

男の自宅へ行かなくなってからは、毎晩毎晩泣き、何度も電話をかけようと思った。禁断症状のようなものである。男と彼女が今、一緒にいるかもしれないということを考えるだけで、怒りが溢れた。悔しかった。わたしのことを見てくれる人などいないのだろう、と絶望的な気持ちになった。

その半年後、わたしは会社を辞めた。そうしないと現状は何も変わらないし、これ以上行き詰るのは嫌だった。わたしは自分を試す気持ちで、風俗の世界へ入った。

2005.02.12

Follow me!