第0話 私は名古屋の風俗嬢

2002年3月。名古屋の某風俗店に私の姿があった。

『第一希望:フリーター』

進路希望調査表を出した、高校3年の夏。あの時から私の就職先は既に決まっていたのだ。卒業証書をクローゼットの中に押し込んで、制服を脱いで、髪の毛を染める。そして私は風俗専門の雑誌を買った。

『コンパニオン募集』のページに折り目をつけて、なんとなくよさそうな店に電話をかけて、面接の約束を取り付けた。卒業してから24時間もたたないうちに、私は風俗の店のドアを叩いていた。

18歳。何も知らない卒業したての素人少女。私の後についてまわるそのキャッチフレーズに、客は飛びついた。一週間もたたないうちに、勤務時間は指名予約でうまり、雑誌の撮影隊はひっきりなしに訪れて、思い描いていたような風俗嬢ライフを私はこの手にがっちりつかんでいた。何もしなくても客は来る。
努力なんて何もしてない。『18歳』というブランドによって売れていることに気づかず、その時の私は真剣に自分には風俗嬢としての素質が備わっていることを信じていたのだ。

そんな華やかな風俗嬢ライフにも、ある日突然終わりが訪れる。雑誌に出たことが身内にばれたのだ。私は強制的にファミリーレストランでのアルバイトを強いられた。悔しかった。悔しかったけどしょうがない。1年後、ほとぼりがさめた頃をねらってまたあの店に戻ろう。私はそう心に決めていた。

そして1年後、あの時心に決めていた通り、私はまたあの店に戻っていた。あの時と同じ源氏名で。当たり前だが私は20歳になっていた。『18歳』というブランドがもう無い私の所に客は来なかった。ついた客も戻ってはこなかった。逃げるようにその店をやめて、私は改めて考えたのだ。今までの力量ではこの世界では生き残ってはいけない。それでも私は風俗嬢としてこの世界で働きたい。だったらどうすればいいのか……。

20歳になった私は、あの時と変わらずこの街にいる。そして、あの時と変わらず金と引き換えに性を売っている。だが私は18歳の時していなかった「努力」をしながら仕事をしている。風俗嬢として、風俗の世界で働くために私がこれからしていかなければならないこと。それを勉強しながら、日々の接客の中で私は確実に「本物の風俗嬢」になりつつあった。
2003.08.15

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