第2回 DC嬢

水商売の経験すらない私が選んだのは、DC嬢だった。店舗型だと待機室もしくは狭い個室で待っていなければならない。昔から団体が苦手な私は女の子同士で顔をあわせるのもなんだか面倒だった。それならば出張系しかない、と思った。そこからの選択肢はふたつ。デリヘルかDC。そして私はDCを選んだ。明確な理由は自分でもよくわからないのだけれど、どうせやるなら中途半端なことはしたくなかったのだ。

DCとは「デートクラブ」の略で、エスコートクラブとも言う。内容は、お店的な言い方をすれば「大人のおつきあい」。「高級会員制エスコートクラブ」とか「VIPエスコートクラブ」とか言い方はいくらでもあるけど、結局することは同じである。女の子がホテルや自宅に行き、お客さんのお相手をする。DCにはソープのようなきちんとした研修があるところはほとんどないため、女の子によってサービス内容はかなりの違いがある。お客さんにとってみれば、どんな子がくるかわからない+好みの子でもものすごくサービスが悪いかもしれない、と一種の賭けみたいな遊びなのではないかなと思う。そのかわり、自分の家とかで女の子とふたりきり恋人気分を味わえるのがDCのいいところかな。

さて、風俗嬢の面接といえば、研修と称していきなり店長と本番をやらされる、とかそんなイメージがあったので、私はけっこう「くるならこい」的な覚悟をしていたのだけど、実際そんなことはなく、私はあっさり採用されたのだった。そのとき、プロフィールみたいなものを書かされたのだけれど、その3サイズを見て店長が、「これがほんとなら脱いで雑誌に載ったほうがいいと思うよ」と言った。私は本名から年齢から住所から電話番号、3サイズまでご丁寧に全部正確なことを書いたから、「全部本当ですけど・・・」と言いつつ、もしかしてこういう世界では嘘をつくのが常識なんだろうかと思って、最初の衝撃(?)を受けたのだった。でもさすがに雑誌掲載は断った。その方が指名が増えるんだろうけど、私の本職はOLだ。だからあまり露出することは避けたかった。

そうして私はDC嬢として最初のお仕事をした。「一度やってみて無理だと思ったらそれでやめます」と店長に言ってあったのだけど、初めての仕事中、やっぱり私にはできないなと心の中で思った。店長には「一日考えます」と言って私は家に帰った。

この世界では一人のお客さんのお相手をすることを「1本つく」というのだけれど、1本ついてもらったお金・・・OLの×日分の給料・・・を見つめながら、私はかなり複雑な心境だった。さっきまで自分のしていたことを考え、あんなことばかりしなくてはいけないのかと思ったら、はっきり言って気が滅入った。けれど今思えば、その時は経験がなかっただけにうまく断ることを知らず、全部お客さんの言いなりになってしまったから相当きつかったのだ。結局私は、10人はついてみないとわからない、という結論を出した。10人つけばみんなぜんぜん違うタイプだろうし、それでだめだと思ったら、やめればいいんだと、そう思った。

次の日、会社でPCの画面に向かいながら、はじめてのお客さんの顔と、あれやこれややらされている自分の姿がずっと頭の中をぐるぐる回り、なんだか一日中ずっと具合が悪かった。それなのに、その日の夜も出勤しようかなと思っている自分がいた。全く自分の心がわからなかった。

私はそれから決意した通り10人のお客さんについた。そして、一番最初のお客さんは、経験のない私をかなりいいように利用したのだな、ということがよくわかったのだった。

そうして私は、昼間はOL、夜はDC嬢として、表面的にはなにも変わらないけれど、裏側では今までとは全く違う生き方を始めたのである。

2002.07.03

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