風俗嬢の人間観察 -佐藤明子-

ソープにみる男の粋とデリヘルに癒しを求めるサラリーマンをあやすコンパニオンの物語。風俗雑誌にありがちなイケイケでもなく、愚痴の捨場でもなく、風俗業界に渦巻く人間模様を通じて語る現役風俗嬢の人生哲学。

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第8回

Y様は謎の王子様


少しばかりご無沙汰してしまいました。一雨ごとに春の息吹きを感じる頃となりました。春と言えば恋愛の季節、新たな出会いと別れが次々と現れる。恋愛は男女の感情の駆け引きだと日々感じています。デリヘルは擬似恋愛をわずかホテルに行くまでのあいだに一応最終地点近くまでボルテージュをあげなければなりません。ムードメーカーとも言えます。その雰囲気作りはあたしから盛りたてるわけで、仕掛けからシナリオまで出会った瞬間にとりあえず方針は決めるようにします。基本はお客様の出方と場を読むということが大切です。

ところが今回話題のY様は、出会いはごく普通のお客様で駅の改札口で待ち合わせてホテルに入ったのが2月のはじめの金曜日の夜も更けた午後10時くらいのことでした。私は終電のことも頭にあったので通常の90分コースは難しいと思っていましたし、Y様も60でとおっしゃったので通常のサービスに自然に流れました。

プレイ中は、たいがいのお客様はほとんど無口になります。心臓をバクバクさせながら、迫ってくる方が多いです。Y様は両腕の袖あげの金属製のアームバンドをはずして、ワイシャツのボタンをご自分でゆっくりとはずしながらタバコをくぐらせていました。とてもクールで、きわめてニヒルにみえたのでした。「お風呂のお湯、入りました。」と声をあたしの方からかけました。「では入りましょうか」と返答すると先にどんどん脱いで浴室にお入りになってしまわれました。あわてて後を追いかけて、シャワーをタックルのように手に取りました。あたしの土俵でプレイに持ち込むのには、ここでシャワーは私がもたなければなりません。

風俗の経験があることは、両手を腰にあてて、立たれた(注:仁王立ち これは前に書いたことがあります)のですが、大事なところをていねいに洗って差し上げても全然元気になってこないのです。ソープをつけるとぬるぬるしますから、触り方によっては、あっというまに元気になられる方が多いのが事実。あたしの技術が至らないのかなと60分という頭もあったので少々あせりました。「時間、あまりないってあせっている?」こちらの気持ちを見透かしたようなぽつりの一言で、思わず、あそこをマッサージしていた指がとまりました。

「石鹸は下だけにしてね。」これはよく言われる言葉なので驚いたりしませんでしたが。上半身をボディーソープで洗うと石鹸の香り、お風呂上りの匂いが残ってしまい、浮気や遊びがばれてしまうわけで、上半身はお湯で流すだけで十分という方が一般に多いです。お風呂の温度は一般にぬるめ、冬でも40度くらいに設定します。先に体を洗って差し上げて、湯船に入っていただいたあと、あたしも簡単に体を洗い、ついでに多くの場合、私は髪も洗ってから、一緒に浴槽の中でいちゃいちゃします。風俗の女性で、髪を洗ったり、お客様と一緒に湯船に入る方は少ないようですが、私は湯船の中で寄り添ったり、甘―いキスを交わすのが好きなので、額から汗がぽたぽた落ちるくらい、ゆっくりあったまります。

Y様は少年のような方で、けして大きくはない胸に甘えてみえますから。そっと優しく、優しく抱きしめるおねえさんに徹します。甘えるだだっこをあやすように、乳首を含ませます。合間合間に耳もとをなめながら、そっと甘い言葉を囁きあったり、唇を絡ませたりと、すっかり二人は20代の恋人のようにタイムスリップしていくのです。理屈ではない、甘美な時間がゆったり流れていきました。

気がついてみたら、時計は夜中の11時半を回っているではありませんか。「ごめんなさい、あたし、12時が門限だから帰らないと。」と大いにあせったのはあたしでした。陶酔した時間が長ければ長いほど、あたしは時間の経過を忘却の彼方に送ってしまう傾向があります。「ぼく、Y市までお送りしますよ。高速で。なんとか間に合うかもしれませんから。急いで出ましょう。」あたふたと仕度をして、駐車場の車に乗り込んだのか、11時43分。夜中でいくら高速が空いていたとはいえども、スピードメーターが警告音を鳴らすなか、巧みなハンドルさばきで無言のまま、Y様は車を走らせるのでした。

「少々、門限に厳しいかもしれません。すみませんでした。」結局家の近くの道路まで送ってもらって着いたのが12時03分。あたしはあえなく、門限やぶりの5万円罰金を支払うはめとあいになりました。自己責任を感じつつ、Y様に最初から門限があるので、最高でも60分にしてくださいときちんとあらかじめお伝えしなかった、私の責任でしたが、5万というと大金です。しばらく、シクシク状態だと思いながらも優しい、一見冷たい感じのY様の不思議な優しさが心地よく感じたのでした。

風俗嬢はお客様に好意を持っても、好きになってはいけないという大原則が結構はじめから危なくなる予感がして、妙に落ち着きませんでした。「たぶん罰金をお支払いにならないといけないでしょうから、あきこさんの手取りが5万円に達するまで責任を持って通いますよ」とや様はおっしゃいました。そうして本当に1週間に一度はあたしに逢いにきてくださるために来てくださることになり、いつも同じこぎれいなホテルで、徐々に気持ちがどこかで、揺れ動く、愛人でもなく、恋人でもなく、むろん奥様でもない、二人の濃密な時間を過ごすようになってあっというまに一ヶ月がたってしまったのでした。Y様についてはまた次回に。

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佐藤明子

風俗嬢の人間観察|佐藤明子



 

 

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創刊:2005.11.03

更新:2008.10.14
お店で買うにはちと恥ずかしい
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